吉岡徳仁 スペクトル-プリズムから放たれる虹の光線
2017年1月13日(金)~3月26日(日)
資生堂ギャラリー
https://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/
地下のギャラリー、静かな柔らかい空気の中
虹色の光に溢れる空間。
■トークイベント
吉岡徳仁さんから45分の映像説明後、
イベント主催側からの質問は3つのみ。
会場から15人ほど、30分以上の質問で進行。
作品を言葉よりも、形として残すことを重視されている吉岡徳仁さん。言葉を紡ぐ数少ない機会で、質問に対して丁寧にお話された言葉には、アートという枠を越えて響く言葉がたくさんあります。(以下、内容趣旨)
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自然をそのまま再現するのではなく、自然を突きつめて考えたときに、どういう形にできるか、という風に考えている。たとえば光や水など、自然は誰でも見たことがあり、感じることができる。その作品に自然を感じて、体の感覚を呼び覚ますような感じ。
作品は、見た人がどう感じるか、感動するのか、客観的に見ることを一番大事にしている。ただ、できるだけ感じる・感動するという言葉にしないでもいいくらいにしたいと思っている。
常にいろいろなことを考えているけれど、アイデアとしてスケッチで残しているわけではない。それが良いものであれば頭に残っている。忘れてしまうものは自分の中で大したものではなかったということ。
短い期間でアイデア出しをしなければならないことが多い。いつも考えを貯めていたら、ちょうどよい機会があった時に、そこから実現させることもできる。
今回の作品もその一つで、以前から実現したかったもの。昨年春に話をいただき何とか間に合った。
自分は哲学のような言葉ではなく、形として残すことのほうが大事。むしろ哲学はいらないとも思っている。
日本らしい形から離れて作っていたつもりが、海外ではとても日本的と言われる。自然というものを形にすることが、結果として日本的なものという評価になっている。
今は学生でも椅子を作る時代だけれど、自分の場合は椅子を作る機会があったら人生をかけるくらい、とことん考えて作ろうと思っていた。
理由は2つあり、一つには、座れたら何でも椅子になるというシンプルかつ難しいことへのチャレンジ。
もう一つは、歴史的にみても有名な建築家の椅子には、その人の作品の個性が凝縮されていること。
そうして考えぬいて作ったのが、Honey Popという蜂の巣を参考にしたハニカム構造をもった紙の椅子で、結果としてMOMAにも収蔵された。
職人さんより知識もなく伝え方もわからずに妥協した時期もあったが、こだわった末にできた奇跡のような作品が、周りのやる気につながることがある。そうしてこだわっていると、いいものを作る職人さんが集まるようになってきた。
興味をもったものを形にするだけで、アート、イベント、建築など、カテゴリーにこだわることはない。
新国立競技場案は、せっかくこの時代に生まれたので、こういうのがあったらいいなと思って形を考えたら、今度は映像を作りたくなって、、、と半年かけて色々作ってみた。今回がだめでも、いつか他で出来るかもしれない。
建築は今はどんなものでもできるようになり、逆に新鮮味がなくなってきているのでは。今後また自然を活かしていくことから、色々とできてくるのではないか。
予算や制限を何も考えなくてよかったら、是非やってみたいのは宇宙に関係するもの。