馬頭町広重美術館

空に斜めの直線を表現した時「雨が降っている」
そう理解するのは一つの日本らしさだった。

日本画家、安藤広重の描く雨にある直線。
そして繊細で曖昧な光。
その表現に重なる日本らしさを感じる場所。

栃木県宇都宮駅から車で1時間ほどの那珂川町
隈研吾設計による「那珂川町馬頭広重美術館」

1995年、阪神淡路大震災で倒壊した蔵。
その場所から広重の絵画が大量に発見され、新聞を賑わせた。
絵画オーナーの青木氏にゆかりのあった馬頭町、
この町に絵画が寄贈されるにあたり、美術館が建てられることになった。

出された条件は2つ。
一つは地元の素材を出来る限り使うこと。
もう一つは馬頭町の核となるような町内・町外との交流の場となること。

地元産の八溝杉が使われたルーバー。
屋根は不燃材で造らなければならず、木はそのままでは使えない。それに対して徹底的に木の格子にこだわるために出した解決策、遠赤外線処理を施した杉で実現したもの。

町役場前から裏山へ通り抜けられる「通り」、
町をそのまま建物の中に引き込んでいる。
美術館という存在自体、閉鎖的になりがち。
それを町に開いた場所としていく試みのひとつ。

右側のショップでは地元の野菜や陶器を販売したり、カフェでくつろいだり、町の延長にある広場のような場所に。

内部の壁紙に使われているものは隣町の和紙。
和紙を使いながら、穴が開かないような工夫も。

裏にプラスティック和紙を重ねることで、
繊細さを保ち、強度を持たせて実現された空間。
光を繊細に描く画家とも重なるような様々な光。

広重の絵では川や橋など、いくつかの風景を重ねて行くことで日本を表現している。ここでは屋根も壁も木の格子を重ねることで表現している。

西洋絵画の研究家から見ると、空に描かれた直線をふつうに雨だと思うのは、日本人独特の感覚だという。19世紀末ころまでの西欧で雨の表現は、ターナーの絵画のように「もやがかかったもの」

日本画では空に直線を描くことで雨を表現し、そこに雨音まで感じる感覚。直線に感じる日本らしさを建物全体に纏って、創り出された空間。

美術館の北側には、美術館と同じくらいの広さをもった石庭、その先に広がる緑の景色。

安定した柔らかい光が差し込む、静かな空間。
休憩用のベンチも隈研吾氏の設計によるもの。

ゆっくり目を休めたり、空気感を感じたり。
美術館と一体化した自然も、鑑賞する美の一つ。

かげろうも作品のように。
レースのような羽でギャラリーにお立ち寄り。

経年により色味を変えている格子は、
すでに昔からあるような趣に。

光、空気感、そこに佇んで感じるものに包まれ、
ゆったりした時間の流れるリラックスする空間。