HOUSE OF FINN JUHL

日本でデンマークにいるかのように感じるホテル
HOUSE OF FINN JUHL HAKUBA(ハウス・オブ・フィンユール 白馬)

デンマーク生まれの建築家、フィン・ユール。
建築・家具・スカンジナビア航空機内にまで及ぶ数多くのデザインのほか、ニューヨークにある国連ビルの信託統治理事会会議場(フィン・ユール・ホール)も、フィン・ユールによって1950〜1952年に設計され、生誕100年を迎えた今でも改修され利用されるなど、そのデザインは今も愛され続けている。

そのフィンユールのデザインした家具に囲まれ、ゆったりとした空間に身を置き、家でくつろぐように、読書にふけり、飲み物を囲みながら会話し、自然を眺めるような、豊かな時間が流れている場所。

長野県白馬、エコーランドにある HOUSE OF FINN JUHL。
ここはフィンユール家具のライセンスをもつ、デンマークのワンコレクション本社と日本法人が共同オーナーとなっている。もともと自分たちがこちらに滞在してくつろぐこと、過ごす場所にできるようにと考えられた空間でもあり、どこか家のような温もりや手仕事のような優しさがある。

一度手にすると長い時間を共にする家具だからこそ、日常のようにくつろいで、その居心地を感じてもらいたい。フィンユールのデザイン哲学や造形とともにある、その想いも叶えるショールームのような場所として過ごせるようにと、ホテルとして開放されている。

ロビーで手前右にある、45 CHAIR は肘置きの造形美でも有名な一脚。
ワンコレクション社のフィンユール復刻家具は、この 45 CHAIR を含めて約半分の種類が実は山形県朝日町にある、 朝日相扶製作所で製作されている。ワンコレクション社の日本での製造管理を担当し、共同オーナーでもある岡崎氏が、デンマーク本社と日本の工場との架け橋になり復刻に関わったもの。日本の技術が非常に高いレベルを要求するデザインの実現にも答え、復刻に繋がっている。

CHIEFTAIN ROOM にある CHIEFTAIN CHAIR。
それぞれの部屋に置かれたそれぞれの家具は、その部屋のテーマとなり、室名にもなっている。もともとのペンションを改装した部屋は、2部屋分を1部屋に広げられ、ロフト部分も吹き抜けた天井の高い伸びやかな空間に生まれ変わっている。

POET CHAIR のある、POET ROOM
朝陽の入る、詩情ある佇まいの美しいソファ空間。

FRANCE CHAIR のある、FRANCE ROOM。
パブリックスペースには置かれていないFRANCE CHAIR、じっくりと座ることが出来るのはこの部屋のみ。

1階より2階へ上がったところにある、パブリックスペース。日本にインスパイアされた JAPAN CHAIR の背もたれ部分は神社の鳥居のような構造。もともと囲炉裏だったものが再利用された本置きを囲みながら、窓から見える白馬の木々の緑、雪、光を感じる穏やかな空間。

地下にあるバーは3つに分かれた空間。
もともと40年以上前の建設当時からあったコンクリートを活かした壁には少し木目の残る、最近では珍しい少しざらざらした手触りの趣がある。CHIEFTAIN SOFA 、45CHAIR の置かれた空間や、少しずつ区切られた空間には、それぞれの家具が個性と質感を与えている。

こちらのバーでは夕方から夜の時間帯にフリードリンクが提供され、希少な小布施ワイン、白馬在住のイギリス人が醸造しているビールなどもいただきながら、ゆったり語らったり、読書をしたりと思い思いの時を。

手前の PELICAN CHAIR、奥にあるBAKER SOFA 。
たとえば長時間のゆったりした語らいの時、人はいろいろな姿勢を取るもの。肘を置いてくつろいだ姿勢で座ったり、体の向きを変えて座り直しても座りやすいなど、人間の体の構造に加えて、人のとる行動も含めた座りやすさを丁寧に考えられている椅子。

中央にある COCKTAIL TABLE は少しだけ三角がかって楕円を帯びた形。これは建築家だったフィンユールが、人の過ごす空間の中で家具について考え、人が話す時には正面で向き合うと緊張関係を生むことに対して、 横並びや斜めで向き合うと、少しリラックスして向き合うことができることを形にしたもの。

 BAKER SOFA 二つに分かれたカーブ

BAKER SOFA の図面に添えられた、ソファの意図について。
—このソファは2つの異なった問題を解決しようとしている:
ソファに普通の姿勢で座っても、足を上げてリラックスした姿勢で座っても、よいサポートが出来ること。両端では、頭とおなじく肘も休めるように。2つに分かれた背もたれが効果的。よい休息を!—

体の構造を考えたとき、人間工学に基づくことも大切かもしれない。けれど人間は動いたり、疲れたり、心理的なことも反映する生き物。人間工学の観点に加えて、その体や心の動きまでも、あくまで人間らしい視線で見つめ、丁寧にデザインされていることがフィンユールの家具には共通している。

ダイニングでは、セルフサービスでのデンマーク風の朝食。

朝食はデンマーク人スタッフが作っている。家具、空間、食事など、さまざまな形でデンマークにいるかのように感じる場所。

ロビーのコーナーでは GLOVE CABINET がチャーミングなアクセント。

雪のとき、新緑のとき、夏の光の届くとき、葉が赤に染まるとき、夜長の語らい、静かな読書、それぞれに楽しみを持てるような居心地よい空間。

フィンユールの家具とともに。

 HOUSE OF FINN JUHL HAKUBA